格闘技/プロレス
最近読んだ本を2冊。まず、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(増田俊也著)700ページを超える大著だが一気に読める。まずは木村政彦、ひいては柔道(今の講道館柔道とはまた違った形の柔道)がいかに強かったのかを丁寧に描き出し、プロレスラー力道山戦で「負けた」理由を解き明かす。傑作。もうひとつは『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(柳澤健著)僕は女子プロレスにも、クラッシュ・ギャルズのファンでもないが、著者の『1976年のアントニオ猪木』がめちゃくちゃ面白かったので読んでみた。前作の興奮度には及ばなかったのだけど(題材が違うから)、クラッシュ・ギャルズがどういう存在だったかが浮かび上がる。両著作(あるいは近年のプロレス、格闘技本)の共通項はプロレスが「スポーツ」ではなく、シナリオがある「ショー」であることが前提として語られている点。少し前なら、こうした視点の本は書けなかっただろう。そうした意味では、「真実」を探るノンフィクションとしては鉱脈がまだまだありそうだ。同時に、ではなぜプロレスが美しいのか、もまた書けるような気がする。