2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。
2011/10/21 金曜日
少し前にVIDEO ACT!で3・11をテーマに映像作品を募集していることを書いた。当初、締め切りが10日だったのだが、諸事情で22日、つまり明日に延ばした。今回の公募オムニバスビデオに関しては、僕が言いだしっぺだった。正式に公募することが決まってから、僕も何を作ろうか、ずっと考えてきたのだが、どうしても表現できない。勝手にテーマを重く考えすぎているせいもあるのだろうが、やはりいろんなことを考えてしまう。そんな状態では撮影も出来やしない。新作の製作で頭がいっぱいだったせいもあるが、ずるずる製作を延ばして、今日になってしまった。言いだしっぺが逃げるわけにもいかない。だから、今日はカメラを構えて町に出るつもりだった。ただ、町の植物を撮ろうと思っていた。そしたら、あいにくの曇り空。ああ、今日も撮影できないかな、と思っていたら、ふと、この曇り空を撮ってみたくなった。やおらカメラをベランダに出し、曇り空にレンズを向けた。モニターを見ながら、ああ、これだったのだ、と気付いた。3・11後、僕の中にある、様々なモヤモヤしたもの、映像にも言葉にも出来なかったモヤモヤしたものを勝手にこの曇り空に仮託していたのだった。自分でネタばらしをしてしまうが、僕は延々モニターを見つめながら、3分11秒、ワンカット曇り空を映す作品にすることに決めた。一生懸命作品を作って応募してくれた人、見に来てくれた人には手抜き、と言われるだろう。それでも、今の僕の心象を表現するには、この曇り空が一番しっくり来たのだ。(と言っても、気持ちが晴れない、ということでは決してないです。新作が完成した、というのは僕にとっては明るい太陽が照ったようなものなので。曇り空、というのは僕の中のある部分、かと思う。)まぁ、僕の「作品」はともかく、様々な角度から3・11をテーマに描いた作品は興味深いと思います。上映予定は下記の通り。(来週には1本につなげる、最後の大仕事が・・・。)
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VIDEO ACT! 「3・11」上映会
3・11をテーマに一般公募した映像作品を全作品上映します。
日時:10月29日(土)19:30~
場所:新・港村(横浜市) http://shinminatomura.com/access/index.html
参加費:500円(別途、新・港村入場料300円がかかります。)
問い合わせ:VIDEO ACT!「3・11」担当・本田
toyama@amail.plala.or.jp
未分類 — text by 本田孝義 @ 19:16:30
2011/10/20 木曜日
今日は新作で使用した音楽に関して、諸々の手続きをしていた。前作では映画用にオリジナル音楽を風の楽団に作ってもらったのだけど、今作はすでにCDとして発売されている音楽を使用させてもらうことにした。いろんな理由があると思うのだけど、今作の音楽に関してはずっと決まらなかった。おぼろげなイメージがあって、あれこれ音楽を聞きまくって探したのだけど、どうしてもぴったりくる音楽が見つからない。そんな迷走を続けている時に出会ったのが、あらかじめ決められた恋人たちへ、の新譜だった。とてもいいアルバムだった。そのアルバムの最後の曲、”calling”が僕にはストンと来る曲だった。アーティスト、アルバムの製作会社に連絡をして使用許可をいただいた。最初、自分ではラスト前とラストクレジットに音楽を流そうと思っていたのだが、整音をしていただいた、米山さんのサジェスチョンがあり、最初、あまり考えていなかった部分にも音楽を入れることになった。ミックス前に音楽が入った部分を聞いたらとてもよかったので、そのまま進めることにした。僕としては、とてもよくなったと思っている。だから、今日は正式に、JASRACへの使用申請、アルバムの製作会社への申請をしていた。
未分類 — text by 本田孝義 @ 22:41:19
2011/10/19 水曜日
今日は来年頭に公開される、『ニーチェの馬』(監督:タル・ベーラ)という映画の内覧試写があったので見に行った。すごい映画だった。ただ、何が「すごい」のかを説明するのはかなり難しいし、僕の語彙では不可能だ。映画の内容を簡単に書くと、暴風が吹き荒れる家での農夫と娘の6日間、という味もそっけもない書き方になってしまう。(この農夫が馬を飼っているのだが、この馬がニーチェと関係があるらしい。)映画はファーストショットで、馬が馬車を曳くところを延々映すのだが、この映像が異様な迫力に満ちている。同時に、奇跡的なカメラワークで映画のただならぬ雰囲気を刻みつける。映画は乱暴に言ってしまえば、物語的映画と詩的映画があると思うのだが、この映画はどちらにも当てはまらない。僕は端正なモノクロ、少ないセリフで始まったので、勝手に詩的な映画かと思ったのだが、どうも違う。ストーリーはほとんど無きに等しいが、無いわけではなく、上質な短編小説、といった趣だろう。だが、映画は2時間半近くあるのである。じゃあ、短編小説を水増ししたものかというとそれも違う。なぜなら、僕はこの2時間半、全く飽きることがなかったからだ。では、何が根底を支えているかと言うと、僕はカメラワークではないか、と思っている。映画はよく「時間」と「空間」を創る芸術、と言われたりするが、本当にそれを実現している映画は少ない。僕はこの『ニーチェの馬』は数少ないそういう映画なのだと思う。特にいいのはステディカムの使い方だ。ステディカムが開発されてから、安易に使っている映画がいっぱいあるわけだが、ちゃんと意味のある、空間をどう見せるか、ということにステディカムをこの映画ではかなり意識的に使っている。同時に、室内のカメラの動きもいい。だから、セリフも少なく、話も少なくても緊張感を持って見ることが出来る。言ってしまえば、とても構築的な映画で、そういう意味では建築的な映画かもしれない。
未分類 — text by 本田孝義 @ 22:44:24
2011/10/18 火曜日
今日、やっと新作の『モバイルハウスのつくりかた』が完成しました!と言っても、作業自体はデータの書き出しの続きで、HDV1本、DVCAM1本、Blu-ray3枚、DVD2枚を作っただけなので、あまり実感はない。特に、自分では「映画」と思って作っているにも関わらず、完成した作品を大きなスクリーンでまだ見ていないので、余計に実感がわきにくいのだと思う。どういう形になるか分からないけど、近々、スクリーンで見れるようにはしようと思う。(一般お披露目は少し先になりそう。)撮影を始めたのが、昨年の3月。それから約1年半。何はともあれ、完成できたのでほっとする。次は上映に向けて動かなければ。
(新作が完成したらこのブログをやめよう、もしくは移転しよう、と思っていたのですが、もうしばらくは続けます。前の作品内でのブログはさすがにちょっとカッコ悪い、気がしてます。)
未分類 — text by 本田孝義 @ 23:23:51
今日はパソコン上のデータをHDV、Blu-rayに書き出すつもりだったのだが、HDVへの書き出しがなんだかんだのトラブル続きで、えらく時間がかかってしまった・・・。とりあえず、1本は作った。HDVで上映することはあまりないかもしれないが、とにかくいくつかの上映形態に対応出来るようにはしておこう、と思う。思えば、今回初めてハイビジョンの作品なので、あれこれ分からないことも多く、どうなることかと思ったが、ここまではたどりついたのではあった・・・。
未分類 — text by 本田孝義 @ 0:37:12
2011/10/16 日曜日
今日は谷中で長年続いている、芸工展の実行委員会企画として、市田邸で僕の『ニュータウン物語』が上映された。市田邸は築100年になる古い家で、そんな場所での上映。上映はなんと広い部屋の床の間の壁に投影!なんとも和む上映でした。1回目の上映では人む少なく、ちょっと心配しましたが、2回目の上映ではほぼ満席となりほっとした。2回目の上映では、”floating view”という美術展を企画し、映像作家でもある佐々木友輔さんが見に来てくれたり、プラスアーツの百田真治さんも見に来てくれた。(奇遇なのだが、今日、自宅を出たら近くの公園で”カエルキャラバン”をやっていて、おーっと驚いたのだが、そのカエルキャラバンを当初から企画してきたのが先のプラスアーツ。防災とアートを結びつけた活動をずっと続けていて、3・11後、より必要とされていくに違いない。)何人もの方と面白い話が出来たし、僕自身、色々、思い出すことや考えることもできて楽しい上映会でした。
未分類 — text by 本田孝義 @ 23:18:48
2011/10/15 土曜日
今日は新作『モバイルハウスのつくりかた』のスタジオ・ミックスダウンの日。10時に録音スタジオである、ヒポ・コミュニケーションズへ行って、整音作業が終わったものを全編見せてもらう。自分が思っていた形と違う形で音楽が入っていて、新鮮だった。米山さんの音楽の入れ方で見ると、映画がスムーズに流れていく。同時に、ある部分では無音がとても効果的に使われていた。音に関してはかなり問題があるカメラで撮影していたので、どうしても直らない部分が多々あるのだが、それでも最初にスタジオで聞いた時を思えば雲泥の差。何箇所か気になった部分を直してもらって、ミックス・ダウンの作業に入るものの、いくつか問題が発生し、かなり時間がかかってしまった。でも、無事作業終了。作業を終えたテープを持って行って、事務所で映像に音声をつける作業。ここまでで時間切れ。パソコン上のこのデータをHDVとBlu-rayに書き出せば完成。明日は『ニュータウン物語』の上映があるので(ちなみに、今回の新作は僕の中ではつながっているのだ)、作業は月曜日に。
未分類 — text by 本田孝義 @ 23:41:44
2011/10/14 金曜日
ずっと自宅に居てももやもやするので、今日は事務所にて待機。VIDEO ACT!の「3・11」の作業を少し。
明日はついに新作のミックス。僕は学生時代から映画の音入れが大好きだった。学生時代は8mmフィルムだったので、ほとんどがアフレコだったが、アフレコも好きだった。音楽入れ、効果音入れも好きだった。何か映画が別のものに変容していくような瞬間が好きだった。今回の映画では音に関してはとてもシンプル、なはずだ。まず、僕としても久しぶりにナレーションがない映画になる。最初の長編ドキュメンタリー映画『デフ・ディレクター』はろうあ者のドキュメンタリー、ということもあって、意識的にナレーションを入れなかった。今回は編集をしていて、ナレーションの必要性を感じなかったので、ナレーションはない。音楽も最小限度、ぐらいかと思う。とはいえ、音がどうなっているか、とても楽しみだ。
未分類 — text by 本田孝義 @ 22:46:32
2011/10/13 木曜日
基本的に今週は自宅待機中。前にも書いたように、現在、新作の整音スタジオ作業中。その作業にずっと立ち会うことはなく、15日のミックスの前に全編を見ることになっている。とは言っても作業のことはずっと気になっているし、何か必要なことが出てくる可能性は常にあるので、米山さんに言われたわけではないが、自宅で待機するような状態にしている。明日も、多分、同じか・・。
未分類 — text by 本田孝義 @ 23:28:05
2011/10/12 水曜日
僕が関わっている、VIDEO ACT!では、現在、「3・11」をテーマに映像作品を募集している。(募集要項はhttp://videoact.seesaa.net/article/219034679.html )。今年、あれだけ大きなことがあったので、いくつか似たようなオムニバス映像作品が作られている。なら国際映画祭は河瀬直美監督が世界中の監督に呼び掛けて、『3.11 A Sense of Home Films』を製作。また、仙台短編映画祭では41人の日本の監督に依頼して『明日』を製作。どちらも、1本は3分11秒、となっている。じゃあ、VIDEO ACT!は何が違うかと言うと、まず、歴史が違う(笑)。VIDEO ACT!では以前から3分ビデオの公募企画をやってきていて、まずは1999年に『ニッポン・戦争・私』というテーマでやった。これはVIDEO ACT!で山形国際ドキュメンタリー映画祭で日韓ビデオアクティビズムというプログラムをやった時に初めて実施した。この3分ビデオの考え方は、「誰でもが映像作品を作ることができる」というものだから、どんなものでも、無審査全作品上映をやってきた。美術で言えば、アンデパンダンというやつだ。集まる作品は玉石混交だけど、初めて作った人の作品が面白くて、その人の作品が海外の映画祭で上映された、なんてこともあった。毎年やっているわけではなくて、本当に戦争が起きてしまった、2002年・2003年と同じテーマで実施。次は憲法をテーマに2005年に『憲法万華鏡』と題して実施。次が格差社会などを受けて、2006年に『自由不平等』という題名で、さらに2008年には同じテーマで『続・自由不平等』を実施。これらの情報はこちら。http://www.videoact.jp/3min/index.html 作品が見れるものもある。しばらくこの3分ビデオの公募・上映はやっていなかったのだが、3月11日の東日本大震災・原発事故を受けて、3・11をテーマにやろうと考えた。今回、僕が担当になっていて、応募作はすべて見たのだが、様々な角度から描かれていて、とても興味深いものになりそうな予感がある。全部を1本にまとめるのは大変そうだけど。上映は10月29日。
未分類 — text by 本田孝義 @ 23:58:47
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