午前中、昨日出来なかった、ニュースレターの発送作業。今回は会費納入の振替用紙を入れなければならず、やや面倒。メール便にて発送。
事務所に行き、新作の編集作業。細かい部分の修正を続ける。
夜、uplinkに行って『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を見た。公開から随分時間が経ったけど、まぁ、僕には関係ない映画かな、などと思ったりしていたのだが、見てみると傑作でした!あまり予備知識なく見たのですが、冒頭からなかなかに入り組んだ、そして知的な構造のドキュメンタリー映画であることが分かる。なぜかと言えば、本作の監督はバンクシーというアーティスト。そのバンクシーがインタビューに答えて、「俺のドキュメンタリーを作ろうとしたやつのドキュメンタリーを作ることにした」と語る。文字で見たらややこしいので少し解説すると、本作にティエリー・グエッタという、古着屋のビデオカメラ好きが登場する。実質、彼が主人公。ティエリーの親戚にたまたまグラフティアーティスト(ストリートのアーティスト)がいて、面白そうだから彼のことを撮り始める。別に作品にするつもりもなく、撮りまくっているうちに、この世界では有名な(らしい、僕はよく知らなかった・・・)バンクシーと出会う。バンクシーは顔も出さないアーティストで普通、取材も難しいのだが、ティエリーは取材を許され撮影を始め、徐々に強いきずなで結ばれる。まぁ、ここまでが前半。被写体、という言葉は好きではないが、分かりやすいのであえて使うと、要するにドキュメンタリー映画の監督がいつしか被写体に入れ替わり、被写体であったはずのアーティスト=バンクシーが作ったのが本作、という構図。この入れ子構造が面白い。で、後半にはとんでもない展開が。<ネタバレ含む>ティエリーは意気込んでバンクシー(及びグラフティアーティスト)のドキュメンタリーを編集するが、これがとんでもない代物。まぁ、ありがちなザッピング風映像の連続。映画監督としての才能がないことに気付いたバンクシーは軽い気持ちで「お前もグラフティアーティストのなれば?」と言ったもんだから、ティエリーは本気にしてしまう。そこで、一世一代の大勝負。キャリアもないのにとんでもない大規模な個展を企画。映像を見ながら大笑いするのは、ティエリーあらためミスター・ブレイン・ウォッシュ(MBW、洗脳野郎!)の絵やインスタレーションがなんのオリジナリティーも感じられない、ポップアート(特にウォーホール)の出来の悪いイミテーションにしか見えないこと。これは二重の意味で悪い冗談みたい。僕はてっきり展覧会が大失敗する結末か、と思っていたら展覧会は大成功!嘘だろう、と口あんぐり。まぁ、少し前のアートバブル時代のせいもあると思うけど、現代美術の摩訶不思議さと言うか、いい加減さと言うか、これも悪い冗談としか思えない。かくして映画は思わぬ地点に着地する。・・・と長々と書いてきたけど、見終わってから演出も相当入ってそうだなあ、うさんくさいなあ、と思う部分も多々ある。でも、その演出も見事。「一体、どこまで本当?」と思ってしまう、虚実の曖昧さもこの映画の魅力だと思う。いやー面白い映画でした。