『監督!赤字分は折半でどうですか。』
今日は表題の『監督!赤字分は折半でどうですか。~まちと映画と熱意とお金~』という、なんともすざまじい(?)タイトルのドキュメンタリー映画を見に行った。とにもかくにもインパクトのあるタイトルをネットで見つけて、気になってしょうがなかったのだ。このドキュメンタリーは、岐阜県恵那市で、大合併後のなかなか市民交流が進まないことを受けて映画製作を通じた「心の合併プロジェクト」が動き出す。6年間の募金集め・準備を得て、2010年の夏、映画の製作がスタートする、というような内容。ドキュメンタリーは言わば『ふるさとがえり』(劇映画、未見)という映画のメイキング的側面があるのだが、面白いのは通常のメイキングによくあるような撮影現場のカメラが回っているようなシーンはほとんどないこと。タイトルが示すように、映画の製作費に関して普通、あまり表に出てこないようなドロドロしたところまでカメラが入っているのが興味深い。簡単に書くと、恵那市の市民や企業が製作費を寄付して映画を作ることになってはいるのだが、どうにも思うように製作費が集まらない。それでも、無謀なことに(と僕は思った)見切り発車で撮影を開始する。一方、弁当作りからエキストラまで、市民の方々がボランティアのスタッフとして参加するが、プロの映画スタッフとの齟齬も浮き彫りになる。一見、どぎついタイトルだけれど、最近、数多く制作されている「ご当地映画」、「町づくり映画」の現実に迫ったドキュメンタリーになっているのだった。映画を作ることに制作者も市民側も大きな夢を描いているように思えるのだけど、夢だけでは物事が動かない。僕は途中まで、無謀だよな、と他人事のように見ていたのだが、よく考えれば規模は遥かに小さいけど、9年前、自分が育った町で美術展をやったことがあり、かなり無謀なこともやったことを思い出して冷や汗が出た。映画づくり、街づくりなどを考えたい人にとってはかなり面白いドキュメンタリーだと思う。もうひとつ付け加えれば、本作が映画の入り口とすれば、出口、すなわち上映をめぐるドキュメンタリーも何本か作られているので、まとめて見ると面白いかも。