2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2011/8/21 日曜日

『ツリー・オブ・ライフ』

ここ数日のバタバタで少し疲れているので休もうかな、と思いつつ、歩いて行ける場所に映画館があるのだから、雨の中傘を差しつつ映画館へ行く。見たのは『ツリー・オブ・ライフ』。家族から始まる物語が、冒頭、宇宙の創生、生命の誕生を美しい映像で描くあたりはほとんど60年代のフラワームーブメントの映画みたい、などと思ってしまう。それはそれで面白くはあるのだが、でも、本作の肝はとてもシンプルに思春期の男の子の話だと思う。その描写がとてもリリカルで僕はその部分がよかった。父親との葛藤、母親への微妙な距離、性の目覚めなどなど、時代と国は違えど、ああ、あったなあ、と思えるシーンがいくつもあった。大きく違うのは、冒頭にも多く出てくる、神への問いかけだろうか。(僕はクリスチャンではないので。)思春期ものと思ってみれば、天地創造の映像は、まあ、なくてもいいようなもんだが、それでは映画の広がりがなくなる、とでも監督は思ったのかもしれない。(むしろ、そっちがやりたかったのだ、とは思うが。)蛇足ながら、現在のシーン(ショーン・ペン演じる大人になった主人公のシーン)は久しぶりに映画で現代建築を感じさせてくれる映像が続出していて興味深い。もちろん、それらの映像は必ずしもカッコいいものではなくて、どこかバベルの塔のように撮られていると思う。こうした映像を見ながら、正負どちらの意味でも、今の日本の現代建築をちゃんと撮った映画は少ないなあ、とあらためて思った次第。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:10:29