『小さな町の小さな映画館』
メイシネマでよくお会いする、森田恵子さんが作られたドキュメンタリー映画『小さな町の小さな映画館』の試写会があったので、出かけてきた。小さな町、とは北海道の南岸にある、人口1万4千人あまりの浦河町。ここにある映画館が大黒座。創業が1918年(大正7年)ということだから今年で93年。建物自体は3度建て替えていて、現在の大黒座は1994年に改築されたそうだ。それにしても、人口が減ってきた、ということがあるにしても、昔は日本全国小さな町にも映画館があったということがあるにしても、これだけ小さな町で映画館があること自体が奇跡的なことだと思う。このドキュメンタリー映画では、4代目館主の三上雅弘さんだけではなく、この町で大黒座を愛する人びとが多く登場する。その方たちが映画を語り、大黒座を語る時のきらきらした表情が印象的。映画館が人びとが集う場であることがよく分かる。もちろん、映画館の経営は大変だ。副業でクリーニング店をやられているそうだ。(そのクリーニング店自体の営業も大変だそうだ。)こうやって書くと何やら「映画愛」が充満したドキュメンタリー映画のようにも思えるかもしれないけど、出てくる方々はどこか肩の力が抜けた、というかあまり背伸びをせず大黒座と向き合っているような気がする。三上雅弘さんも「石にかじりついてもやりたい、ということはない」と語っている。そんな姿勢が、どこか風通しのいい、さわやかな風のが吹いてくるような映画になっているのかもしれない。大黒座のロケーションもいい。港が見える映画館、というのは素敵だ。最近、東京ではミニシアターの閉館が相次ぎ、映画ファンの間ではちょっとした話題になっている。その背景にはなかなかに複雑なものがあるけれど、好きな映画館の閉館に心を痛めた人はぜひこの映画を見てほしい。映画、というのは不思議なもので、今では家でDVDを見れる時代だけど、同じ映画を多くの人と一緒にスクリーンを見つめる行為には独特の空間がある。そんなことをふと考えた。本作は近々大黒座で上映されるようだし、東京では映画館での公開も決まっているようだ。