石川真生写真集「FENCES, OKINAWA」
うっかりしていたのだが、沖縄在住の写真家・石川真生さんの写真集「FENCES, OKINAWA」が昨年末、発売された。僕は数日前に買った。「FENCE」は最近、石川真生さんが取り組んできたテーマで、沖縄では写真展が開かれていたのだが、東京ではまだ開催されていない、はずだ。人づてに「いい」という話を聞いていたので、見たくてしょうがなかったのだが、今まで見るチャンスはなかった。こうして写真集で見ることが出来てうれしい。写真集の前半は、上記の「FENCE」の写真。フェンス、とは沖縄各地にある米軍基地との境界にあるフェンスをさす。文字通り、フェンスの向こうは「アメリカ」であり、即物的にこちら側(=沖縄)と向こうが分断されている。石川さんはこれまでほとんど「風景」を撮らない、ひたすら「人」を撮ってきた方なのだが、この写真集ではそのフェンスが存在する風景の写真が数多くあって、新境地を感じた。それでも不思議なもので、その風景に石川さんが感じているであろう、痛烈な悲しみ、怒りなどが浮かび上がってくるのだ。写真集は後半、これまで石川さんが基地周辺で撮った人びとが収録されている。僕は今までに見たことがある写真も多かったのだけど、これが前半のフェンスをめぐる写真と併置されていることで、同じ写真でも今までと違った印象を感じたことが驚きだった。フェンスで地面は分断されているけれども、人の心を隔てることは出来ない、とでも言うか。人びとの喜怒哀楽が今まで以上に鮮烈に感じられた。1点、僕にとっても思い出深い写真が収録されている。2004年夏、沖縄県宜野湾市の佐喜眞美術館で「沖縄ソウル 石川真生×本田孝義」という展覧会をやった。展覧会2日目、8月13日に沖縄国際大学にヘリコプターが墜落した。現場は美術館の近く。僕も石川さんも現場に駆け付けたが、双方、カメラを持っていなかった。石川さんは急遽、使い捨てカメラを買って、写真を撮り始めた。その写真は次の日から展覧会に加わった。その写真を見てびっくりした。この事件の写真は新聞を始め数多く目にしたはずだけど、石川さんが撮った写真はとても強烈なものだった。たとえ使い捨てカメラでも写真家が撮るとこんなに迫力ある写真が撮れるのか、と驚いた。その時の写真が写真集に収録されている。