2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2010/1/16 土曜日

「晴子情歌」(上・下)

昨日、変なことを書いてしまった。読んでいた小説は「晴子情歌」(上・下)。高村薫著。高村薫のデビュー作からしばらくは追っかけて読んでいて、とても好きな作家だった。骨太な文体・内容等が好きだった。ところが、「照柿」でつまずいた。それまではミステリー小説、というくくりで読めたのだけど、「照柿」はほとんど純文学のような小説だった。いつにもまして、濃密な描写についていけなかった。かなり時間が経って、やっと読破出来た。そして、「晴子情歌」が出た時は内容を聞いたり、少し立ち読みをした段階で、こりゃあ、読めないなあ、と思って読むのを諦めた。昨年、新刊が出たのだが、3部作完結とも言っていい内容のようで、そこから読むのもどうかな、と思った。けれども、ある時からこの3部作のことがどうしても気になって、その出発点である「晴子情歌」を読みたくなった。意を決して読み始めたのだが、これが面白かった。文学論には疎いのだが、言葉使いとして正しいのか分からないのだが、今ではほとんど聞かれない全体小説という言葉を思い出した。とにかく、主人公・晴子が息子に書き送った手紙が中心なのだが、自らの出生から書き起こされる物語は、日本の近代と重なり、重層的なのだ。そして、その手紙を読む息子の魂の彷徨とクロスする。決してエンターテインメントな小説ではないが、夢中で読んだ。昨晩もほとんど徹夜で読み終わった。さて、次の『新リア王』は読めるだろうか。(と書きながら、上巻を読み始めていたりする・・・。)

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:17:04