2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2009/11/12 木曜日

事業仕分けと日本芸術文化振興会

昨日から政府の行政刷新会議による「事業仕分け」が始まった。ネット中継などもあって(僕は今日、ちょっと見ただけだけど)予算編成に透明性を高めようとする姿勢は意義があると思う。その中で、昨日は独立行政法人日本芸術文化振興会についても議論されたようだ。コメントがさっそく読めるようになっている。(ここにあります。)ワーキンググループの結論だけを書くと「縮減」となっている。「ああ、やっぱりなあ」と思った。日本芸術文化振興会と言っても、国立劇場、国立能楽堂など範囲は幅広いが、縮減の中に芸術文化振興基金が含まれている。「基金」となっているように、政府の支出と民間の寄付で運営されている。助成対象は舞台芸術から美術展、文化財・工芸と幅広いが、(2009年度の助成対象はここ)僕が関わる部分では映画の製作(2009年度の助成対象はここ)、映画祭・映画上映への助成がある。文化政策への考え方として、「商業的に成立しないものは文化ではなく、公的助成は不要」という考え方から「商業的に成立しないものには公的助成が必要」という考え方までいろいろありうると思う。文化・芸術と助成の関係は、貴族や武士がパトロンだった時代から複雑で難しいものではある。また、財政事情が厳しい国・自治体にとって、文化政策は真っ先に切りやすい。(地方においては、すでに構造改革路線の中で文化予算は大幅に削られてきた。)残念ながら、意欲的な映画やドキュメンタリー映画の中には企業などから製作費を集めるのが難しい企画が確かに存在する。各地の映画祭も観客の入場料収入だけでは成立しないものが確かにある。僕の場合を言えば、芸術文化振興基金ではなかったが『ニュータウン物語』も『船、山にのぼる』も文化庁の助成を受けており、助成がなければ映画を完成できなかったかもしれない。文化予算が多いか、少ないかというのもいろいろ議論があって、役に立たないものに金を使うな、という考えから、諸外国と比較して予算が少ないという声もある。僕もいろいろ考えてきたけれど、何が理想かという答えはなかなか出ない。また、今の助成方法がすべて正しいとも思わない。ただ一つ言えるのは、この事業仕分けの評価が実際に予算編成に反映されれば、多くの文化・芸術活動が影響を受けることだけは間違いない。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:49:13