『KIKOE』
ユーロスペースでレイトショー中のドキュメンタリー『KIKOE』を見た。一言でいえば音楽家・大友良英のドキュメンタリー、となるのだろうが、一筋縄ではない。彼の音楽から導かれるかのように、映像は彼のパフォーマンス、幾人かのインタビュー(必ずしも大友良英と関係がある人だけではないようだ)が一見でたらめに編集されている。言わば、映像によるカットアップか、と思ってみていたのだが、むしろ考えていたのは「ノンリニア」という、文字通りの編集方法だったりした。今ではパソコンでの編集をなんの注釈もなく「ノンリニア編集」と呼んでいたりするけれど、「ノン」という言葉は否定形であるわけで、かつてのテープ編集が基本的に直線的に進むことに対して、「非」直線的に進む編集のことを「ノンリニア」編集と言っているわけだ。だから、ノンリニア編集というのは、時間も空間も一方向ではない編集ができることが利点であるはずなのだが、実際はどうしても「物語」や「意味」によって直線的に時間が流れる編集になることが多い。そういう点では、本作は言葉の真の意味での「ノンリニア」編集によって出来た映画と言えるだろう。じゃあ、面白かったのか、となるともやもやするものがある。見始めてしばらくは面白かったのだけど、細切れに断片化されたアットランダムな編集にすぐ慣れてしまって、意外と単調にも思えてくる。まあ、それこそが「ノイズ」的、ということかもしれないが、そうでないかもしれず、どうも煮え切らない。