2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2009/3/10 火曜日

「仮想儀礼」

篠田節子著「仮想儀礼」(上・下)を読み終わった。これまた、上下巻合わせて900ページを越える大著。どうも最近、長いものを読みたいのかもしれない。さて、本書、行き詰った男二人が「金儲け」のために宗教団体をでっち上げる話。まずはネット上にホームページを開設するが、生きづらい系の若者が入信し、その後、ビジネスマンにも広がっていく。面白いのは、教祖がそもそも「似非宗教」と思っているから、説教をたれながら常にうそをついていることを自覚しているところ。こういう面白さはあるのだが、僕にはちょっと薄味な気がした。宗教の拡大過程が丁寧に描かれるが、少し類型的な気がする。もっとも、こうした軽薄さで拡大していくのが今という時代という気がしなくもない。後半の宗教団体が崩壊していく部分のほうが面白かった。それにしても、こういう本を鞄に入れて持ち歩くのは重い・・。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:51:34

2009/3/9 月曜日

おしょくじプロジェクト

岡山の三宅航太郎さんから、向島で展覧会をやります、という案内をいただいていた。向島といえば、今住んでいるところからは近い。土日に行けなかったので、今日、行ってみた。行ったところは、アートスポット・鳩や。いろんなアーティストが商店街の中で展覧会を行なっているスペース。実はここも気になっていた場所だった。展覧会の案内に「おしょくじプロジェクト」とあって、なんだかよく分からないなあ、と思っていたら、「おみくじ」と「お食事」をかけていたのだった。簡単に言うと、おみくじをひくと、その番号に該当する飲食店を紹介した短冊を渡される。展覧会に来た人は、それをたよりにお店に行く、という仕組み。こう書くと簡単そうだが、三宅さんに聞くと、参加店は60軒を越えたとか。これは本当に大変だ。僕の僅かな経験から考えても、一軒一軒、趣旨を説明し、お店を取材するのは相当、労力が折れる。滞在制作も2ヶ月だったとか・・。でも、こういう遊び心がある展覧会は楽しい。僕がひいたのは6番で、行ったお店はこぐま。これまた行ってみたいお店だったのでよかった。ここは木造長屋風のカフェ&ギャラリー。落ち着いた雰囲気に気分が和む。棚を見ていたら、この商店街にあった映画館のチラシが。そうか、ここにも映画館があったんだ、とちょっと感慨。カレーのランチセットをいただいてお店を後にした。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:32:49

2009/3/8 日曜日

作業

今日は一日中、事務所で作業。上映関係のイベントでは、上映素材の諸々があったりするもんです。これで作業はない、はず。あとは映写チェックがちょっと大変そう。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:59:29

2009/3/7 土曜日

A&Mクルーズ

今日は気になるイベント・上映などが重なっていたのだが、自宅でどうしても受け取らなければいけない郵便物があり、諸々を断念。唯一、夕方から横浜市ザキ座で開催された、横浜国際映像祭2009のプレイベント「A&Mクルーズ」の第1回があったので行ってきた。今年11月、横浜市でかなり大きな映像関係のイベントがあり、それが横浜国際映像祭。ディレクターは元東京都現代美術館学芸員の住友文彦さん。今回の企画は、本イベントの前にいくつかのテーマを設けてより深く企画を構築していくためのものだそうだ。今日のテーマは「ローカル:横浜の写真/映画」。はじめは開港資料館調査研究員の斉藤多喜夫さんが横浜写真についてのお話。最も初期の写真の歴史を紐解きながら、これが本当に面白い。いくつも目から鱗が落ちた。次は、ヨコシネディーアイエーの笠原征洋さんのお話。僕は『ニュータウン物語』の時に、キネコ(ビデオからフィルムへの変換)でお世話になったので、今日のお話をぜひ聞きたかった。(ちなみに、先日見た、『小三冶』も笠原さんのお仕事だった。『船、山にのぼる』もヨコシネでキネコしているのだけど、こちらは横尾さんにお世話になった。)また、横浜と映像文化を語るなら、ヨコシネの業績も大切だと前々から思っていたので、ここから企画をスタートさせる目の付け所はさすがだな、とも思ったのだ。(今日のことは昨日知ったのだけど。)笠原さんは設立者・佐伯永輔氏のことをお話になり、飛行船による空撮(1923年、関東大震災前の貴重な映像)を見せてくださり、次に関東大震災の横浜の惨状の映像を映された。いずれも、新たな発見に満ちた映像。そして、次に戦前(1928年)のアニメ『文福茶釜』の上映。これがまた素朴なタッチが面白い。お二方のお話はとても充実したもので、聞きにいってよかったなあ、と思いました。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:36:21

2009/3/6 金曜日

打ち合わせ

午後から横浜のザキ座にて、イセザキ映像祭の打ち合わせ。何人かの方が集まって、10日間の上映のスタッフ体制を確認。なんとかいけそうな気がする。(僕は10日間へばりつきですが。)それでも、いざ上映が始まってみるとどうなるか分からないからなあ。その後、喫茶店のまめやさんで打ち合わせ。具体的には来週、閉店後機材を設置してみて試写をすることに。

昨日、ふと思ったことがある。昨年末、今回のイベントの相談を受けた時に「面倒くさいなあ」とは思わず、プランを考えたのはどうしてだろう、と。僕自身は伊勢佐木商店街とは縁がなかったが、ザキ座のことは知っていた。商店街から映画館が消えて寂しい、という話を聞いた時に、僕は岡山市の表町商店街の千日前から映画館がなくなっていった光景を思い浮かべていた。僕が子どもの頃たまに行っていた映画館は全てなくなり(日活系の映画館は残っているのですが)、駐車場に姿を変えてしまった。僕の原風景が消えてしまったようで、寂しかった。けれども、なくなったのはそれなりの理由もあるわけで、単純に映画館が復活できるとも、すればいいとも思わないし、ただのノスタルジーで語ってみてもいけないのだろう。だけど、伊勢佐木商店街で、何か映像で賑わいを取り戻したい、という気持ちに感じることはあった。だから、じゃあ、今、何が必要なんだろうと思って、今回のプランを考えていった。何が正解かは分からないけれど、何かのヒントはあるはずだ、と今は思っている。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:21:57

2009/3/5 木曜日

「日本の国宝、最初はこんな色だった」

最近読んで面白かった本のこと。小林泰三著「日本の国宝、最初はこんな色だった」。新書なのですぐ読める。新書のワリにはちと高めなのはカラーが結構あるから。著者は「デジタル復元」という方法で、ヴァーチャルに国宝の本来の姿を探索する。その面白いこと。今では厳かな雰囲気の東大寺大仏殿はド派手なアミューズメントパークのよう。地獄草紙の本来のおどろおどろしさ、屏風の形態まで推論を重ねる、檜図屏風などなど、いずれも生き生きとして見えてくる。著者がよく使っている言葉は、見る側の「参加する視線」。確かに本当に面白い美術に出会うと、その中に自らが入り込んでいくような錯覚を覚えることがある。目から鱗がいっぱい落ちる好著。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:16:40

2009/3/4 水曜日

打ち合わせ

今日は午後から、イセザキ映像祭2009の打ち合わせ。まあ、一つのイベントをやるには、次々と細かいことがあるわけで、一つ一つ課題をつぶしていくしかない。特に、上映というのは何もなくて当たり前で、何かあれば単なる不手際にしかならないから、準備できることは準備しておかないと。それでも往々にして、いろんなことが起きるから。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:01:27

2009/3/3 火曜日

チラシ撒き/「ロシア革命アニメーション」

イセザキ映像祭のチラシが届いたので、さっそく、渋谷の映画館などに撒きに行く。効果のほどは分からないが、少しでも目を留めてくれる人がいることを願う。

その足で、試写会へ。見たのは「ロシア革命アニメーション1924-1979」という、聞いただけでマニアックな感じがしてくる特集。話は少しそれますが、僕は学生時代、ひょんなことからソビエト時代の娯楽映画を大量に見たことがある。ちょうどペレストイカが始まった頃で、それまで日本には入ってきていなかった映画が日本に上陸しようとしていた。その魁として、ソビエトSF映画祭で公開されたのが、今でも人気の高い『不思議惑星キン・ザ・ザ』だったりする。この時見たソビエト映画で分かったのは、ハリウッドで作られた映画のパクリ映画が大量にあることだった。例えば、『エアポート』シリーズがヒットすれば、航空パニックものが、『ランボー』がヒットすれば、逆にグリーン・ベレーがやられる映画など、変な映画がいっぱいあるらしい、ということが分かった。同時に、どこの国でも娯楽映画というものはあるもんだ、ということも分かった。

さて、今日、見たのはかつてプロパガンダとして作られた短編・中篇アニメ8本。各々の制作年代の違いもあって、手法も様々でひとくくりにするのは難しい。ちょっと奇妙な感覚を覚えたのは、かのジガ・ヴェルトフ監督の『ソヴィエトのおもちゃ』だった。まさに資本主義国の資本家=太った豚を批判する、揶揄するアニメなのだけど、当時のソビエトの思惑を80年の時を越えて今見てみれば、強欲資本主義でバブルがはじけた今の世界の状況をシニカルに描いた作品にも思えてくるのだ。かつてのソビエトの社会主義の理想がそうではなかったことが、もうばれているわけですが、それでも現在ロシアですら格差社会となり、日本でもそうなわけで、「強欲な資本家」像というのは意外と今だからこそ通じる部分があったりして、なんだか亡霊が蘇えったような、妙な感触を持ちました。このシリーズ、ロシアアヴァンギャルドやアニメの技法などから見るのも面白いとは思うのですが、時空を越えて今に通じる要素を探すと面白いかもしれません。5月公開。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:24:55

2009/3/2 月曜日

『小三治』

うまく時間ができたので、やっとドキュメンタリー映画『小三冶』を見に行った。素晴らしかった!『船、山にのぼる』の音響構成を担当してくださった、米山靖さんがプロデューサーであり録音もされている。何が良かったかと言って、柳家小三冶さんの人柄がじわじわと伝わってきたからだ。有名人を描いたドキュメンタリーって意外と難しい。例えば本作の場合、小三冶師匠の落語を聞きたいという気持ちはありつつ、落語を聞くだけなら「映画」である必要はない。そうかと言って、落語が聞けないのもつまらない。本作ではその辺のバランスが実にうまい。落語は最後を除いて、さわりでしかない噺が多くとも芸の一旦は聞ける。そして、人物の伝記でも解説でもなく、じっくりと見ていると小三冶師匠のかっこよさ、粋な感じ、芸への厳しさなどが伝わってくる。こうして、人物が画面から匂ってくるのが「映画」ならではなのだ。恥ずかしながら僕は落語に詳しくないので、すっかり忘れていたのだが、本作を見ながら、師匠の「まくら」という本を読んだことがあったのを思い出しました。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:25:10

2009/3/1 日曜日

東京ビデオフェスティバル 表彰式

今日は午後から横浜・ランドマークに東京ビデオフェスティバルの表彰式に行ってきた。まずは入り口に、イセザキ映像祭2009のパンフレットがあることを確認。何はともあれ、間に合ってよかった。表彰式では、優秀作品賞を授賞された方々の表彰が続いている。よく考えてみれば、TVFの表彰式がある3月って、ここ数年忙しいことが多く、来たとしても慌しくしていた気がする。表彰式そっちのけで、いつも入賞作のDVDを延々見ていた。今回は、事前にネットで見ていたので、表彰式も落ち着いて見ていた。しばしの休憩の後、ビクター大賞の発表。ビクター大賞は内田リツ子さん作の『共に行く道』。もう、納得。内田さんはなんと80歳。いわゆる、「老老介護」を描いた作品で、ご自身のだんなさんを介護する生活を自ら撮っている。大変だとは思うのだが、語り口にはユーモアがあり、なおかつ的確なカット割りもあって、見せる工夫が随所にうかがえる。僕は傑作だと思う。(ちなみに、この『共に行く道』もイセザキ映像祭2009で3月21日(土)14:00~の上映で上映します。必見!)そして、いよいよビデオ大賞の発表。大賞はドイツのクラウスさん作『メラニー 自分の道をゆく』だった。この作品は、盲目の少女の成長を丁寧に描いた作品。時折、ドキッとするカットもあった。残念ながら、イセザキ映像祭では日本の作品だけに絞ったので上映はしない。

まだ、舞台では進行が続いていたが、帰り始めた人もいたので、慌てて出口でイセザキ映像祭のパンフレットを配らせてもらった。舞台では、この31年を振り返る話が続いているようだ。何人の方と話をしていても、これで最後かという残念がる声が聞こえてくる。これはたまたま偶然なのだが、本当に最後の上映はイセザキ映像祭になってしまった・・・。

その後、レセプションにも参加。製作者の方々に出来るだけご挨拶して、イセザキ映像祭で上映させていただくことをお伝えする。事前に、TVF事務局の方から案内はしていただいてはいるのだけど、ご本人にもお話しておきたい、と思ったのだ。こちらの不手際もあって、全ての人にお話は出来なかったかもしれませんが、お許しを。

イセザキ映像祭の開催まで、まだまだやらなければいけないことが残っている。まあ、なんとかなるか。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:08:36

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