「日本の国宝、最初はこんな色だった」
最近読んで面白かった本のこと。小林泰三著「日本の国宝、最初はこんな色だった」。新書なのですぐ読める。新書のワリにはちと高めなのはカラーが結構あるから。著者は「デジタル復元」という方法で、ヴァーチャルに国宝の本来の姿を探索する。その面白いこと。今では厳かな雰囲気の東大寺大仏殿はド派手なアミューズメントパークのよう。地獄草紙の本来のおどろおどろしさ、屏風の形態まで推論を重ねる、檜図屏風などなど、いずれも生き生きとして見えてくる。著者がよく使っている言葉は、見る側の「参加する視線」。確かに本当に面白い美術に出会うと、その中に自らが入り込んでいくような錯覚を覚えることがある。目から鱗がいっぱい落ちる好著。