『小三治』
うまく時間ができたので、やっとドキュメンタリー映画『小三冶』を見に行った。素晴らしかった!『船、山にのぼる』の音響構成を担当してくださった、米山靖さんがプロデューサーであり録音もされている。何が良かったかと言って、柳家小三冶さんの人柄がじわじわと伝わってきたからだ。有名人を描いたドキュメンタリーって意外と難しい。例えば本作の場合、小三冶師匠の落語を聞きたいという気持ちはありつつ、落語を聞くだけなら「映画」である必要はない。そうかと言って、落語が聞けないのもつまらない。本作ではその辺のバランスが実にうまい。落語は最後を除いて、さわりでしかない噺が多くとも芸の一旦は聞ける。そして、人物の伝記でも解説でもなく、じっくりと見ていると小三冶師匠のかっこよさ、粋な感じ、芸への厳しさなどが伝わってくる。こうして、人物が画面から匂ってくるのが「映画」ならではなのだ。恥ずかしながら僕は落語に詳しくないので、すっかり忘れていたのだが、本作を見ながら、師匠の「まくら」という本を読んだことがあったのを思い出しました。