2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

2008/12/19 金曜日

映画の完成と父の死

2007年1月4日、父が亡くなった。享年67歳だった。その前後のことを思い出すと、今でも胃が痛くなり、いやな汗が流れる、そんな気がする。

『船、山にのぼる』は2006年春ごろ、ほぼ撮影は終わっていて、6月には文化庁の助成を受けられることが内定していた。諸般の事情で、編集に取り掛かったのが10月ごろ。やっと骨格が見えてきた12月中ごろ、父から電話がかかってきた。胃がんの疑いがあるという。急遽入院することになり、父は一人身であったこともあって、病院側から病状について説明したい、とのことで、僕は岡山へ帰った。かなり悪いことが判明した。一旦、東京に戻ってきたものの、緊急に手術することになり、また慌てて岡山に戻った。結果は最悪だった。何も処置できず、年を越すのも難しいかもしれない、という状態だった。僕は目の前が真っ白になると同時に、これから最後の仕上げにかからなければいけない映画のこともあって、混乱していた。医者から、いつ亡くなってもおかしくないと聞いていたので、とにかく岡山に留まることにした。けれども、映画の仕上げに関して、きちんとお願いをしていなかったこともあって、録音の米山さん、現像所の新藤さん、ナレーターの川野さん、あるいはPHスタジオの方々と打ち合わせをするために、一度東京に戻り、慌しく打ち合わせをした。しかし、その後のスケジュールが全く読めなかったので、皆さんには曖昧なことしか言えなかった。翌日、再び岡山に戻った。

その後、父は年を越したものの、1月4日、息を引き取った。こういう仕事をしていると、親の死に目にあえないかも、という漠然とした気持ちを持っていたので、死に目に会えたのはよかったのかもしれない。1月6日、葬儀を済ませ、8日東京に戻ってきた。

東京に戻ってみると、『船、山にのぼる』のために音楽を作り録音してくださった風の楽団の音源が届いていた。僕は「ふるさと」を聞きながら涙を流していた。

文化庁の助成を受ける、ということは2007年3月末までに映画を完成させなければいけない、ということだ。3月末までに完成しないと、1銭も助成金を受けられないばかりか、5年間応募が出来ない、というペナルティーもつく。タイムリミットは近づいていた。

なんとか気持ちを立て直して、編集の詰めに入ったのだけど、この期に及んで足りない映像が出てきた。おまけに、2月になってから全面的に編集を見直すことになり、連日徹夜が続いた。こうして、録音スタジオに入る目処が立たなくなり、米山さん、川野さんには迷惑をかけることになった。

その間、本編では使っていないのだが、ラジコンヘリによる空撮もやった。けど、結果が芳しくなく、あらためて空撮をする必要に迫られた。出来る日は限られていた。3月4日、父の49日を済ませた翌日、岡山の空港からヘリに乗り、広島県の灰塚まで飛んで空撮を行なった。映画のラストシーンの空撮は、本当に最後の撮影だったのだ。

3月末の完成(フィルムにする作業がある)から逆算し、全てがギリギリのスケジュールで作業が続いていた。録音作業も無事終わり、現像所に入れ、映画が完成したのは、締め切り2日前だった。(文化庁の担当官はちゃんと完成試写で完成を確認する。)パンフレットやホームページに自分でもどういう映画か分からなかった、というようなことを書いているが、完成直後は、とにかく完成にこぎつけるまでに必死で、客観的にどういう映画なのか分からなかったのは本当のことだった。ただただ、締め切りに間に合った安堵感だけがあった。

こうして2年前のことを書いていても、苦しかったことばかりを思い出す。けれども、幸いなことに今年、映画館で公開し多くの方に見ていただけたのはつくづくありがたいことだとも思う。

父の3回忌を前にして書いておきたかった。(明日、岡山に帰り、あさって法事です。月曜日には東京に戻ります。岡山でお世話になった友人・知人にも会いたいのだけど、どうも時間がなさそうです。)

未分類 — text by 本田孝義 @ 16:03:22

2008/12/18 木曜日

心穏やかに・・・

見たい映画、見なければいけない映画、見たい展覧会がいくつかあるものの、どうも出かける気がおきない。すぐやらなければいけないこともなく、暇といえば暇ではあるのだが、何かあくせくしたくない、という気持ちがある。

しばし心穏やかにしていたい、と思う今日この頃。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:33:53

2008/12/17 水曜日

散髪

僕は大体ずぼらなので、冬は寒いから髪を伸ばしっぱなしにしていることが多い。だけど、今日は珍しく冬だというのに散髪をした。

今度の日曜日、父の3回忌で岡山に帰るので、多少なりともこざっぱりしたほうがいいかと思って。

月日が経つのは早いもので、もう3回忌。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:54:26

2008/12/16 火曜日

年賀状/クリスマス・プレゼント

今日はちょっと早めに年賀状を書いていた。正確に書くと、パソコンで作って印刷しただけですが。思えばこうして年賀状を書くのは3年ぶり。元々、筆不精だから、ということもありますが、2年前は父が入院していたこともあり、年賀状を書けず、昨年は喪中だったので、喪中葉書を出しただけだった。もっとも、昨年は、年が明けてから寒中見舞いとして映画公開のお知らせ葉書を出したのだった。今年は、映画を公開したから、名刺を貰った人がたくさんいて、さすがに全員には出せないのだけど、それでもお世話になった人には出そうと思って、出す枚数を数えてみれば、約120人になった。これだけ出すのは、初めてかもしれない。ごくごく簡単な年賀状ですが、とにかくお礼のご挨拶のつもりで。宛名を手書きで書いていたら、結局、1日仕事になってしまった・・・。夜、無事投函。

夜、ポストを見ると、えま&慧奏さんから新譜CDが送られてきていた。えま&慧奏さんは風の楽団のメンバー。CDは「Holy Songs」。有名なトラッドなどをえま&慧奏ならではのアレンジで聞かせてくれそうだ。僕にとっては何よりうれしいクリスマス・プレゼント。ただ、残念なのは、このCD発売に合わせて、今週末関東で(お二方は淡路島在住)ライブがあるのだけど、僕は、同日岡山に行っていて、ライブを聞けない。なかなか関東で聞く機会がないというのに、こういう時に限って・・・、残念。岡山の旅のお供にしよう。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:47:35

2008/12/15 月曜日

上映は続く・・のか/試写会

ここのところ、どうしたわけか(いや、これが当然?)上映の問い合わせがいくつか続いている。そのうちの一つは、随分先だけど上映がほぼ決まりそうだ。PHスタジオの池田さんのご紹介もあって、今日は3箇所に資料を送った。そのまま上映が決まればありがたいのだが・・・。

夕方、UPLINKでの試写会に出かける。見た映画は『今、僕は』という作品。来年2月、UPLINKでロードショーされる作品だそうだ。監督は23歳の新鋭・竹馬靖具。なんと自分で主演もしている。(そう言えば、僕も学生時代、監督・主演のアクション映画、なんてものもあった。)母と二人で暮らすニートの姿を生々しく描き出す。ほとんど手持ちで撮られたカメラがとても的確で、緊張感を持ちながら見ることが出来た。ただ、僕は後半がちょっと好きになれなかった。あまり世代論を語るのはよくないと思うのだけど、最近の若い監督はとても繊細な人が多いような気がする。ある種の傷つきやすさ、コミュニケーションの難しさをいろんな表現で見るような気がする。(これは映画だけではなく、アートでも感じるのだけど。音楽もそうかな。)現実がそれだけシビアなことの反映でもあるのだろう。

その後、鎌田さんと精算の打ち合わせ。出来るだけ、年内にははっきりしておきたい、とは思う。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:47:01

2008/12/14 日曜日

読書と昼寝

今日は一日、タイトルどおりの日。ベッドクショというのは、確か写真家のアラーキーが使っていた言葉だけど、まさにそんな日。本を読んでもいつの間にかうつらうつらと・・・。

ここのところ立て続けに横山秀夫の小説を読んでいる。何を読んでも外れなく、短編であっても読んだ後にぐっとくるものがあって、好きなのです。ただ何冊かは映画になっているけど、映画は見る気にならない。原作が好きだから映画を見る、という人も多いのだろうけど、僕は意外と原作が面白かったら映画に興味をなくす人のような気がする。原作を読んでないものは見たりもするのですが・・・。

未分類 — text by 本田孝義 @ 21:28:58

2008/12/13 土曜日

『レッド・クリフ part1』

今日は近くの映画館で『レッド・クリフ part1』を見た。別に三国志ファンでもなければ、ジョン・ウーのファンでもないが、気にはなっていたので・・・。

見た感想は、ひどい映画では全然ないのだが、何か物足りなさも残る。僕はもともとの三国志をよく知らないので、人物像やえエピソードの過不足はよく分からないのだけど、途中まではとてもダイジェスト感があった。かなり駆け足で進んでいるんだろうな、と。戦いも、最近多い、大集団をガーっと見せるような映像は最小限に抑えて、間抜けなことはやっていないのだけど、やはり集団戦というのは、あまり面白みもないものだ、と思ってみたり。その原因は、曹操側に曹操以外の「悪役」的な人物がいなくて、闘いが「燃えない」からだと思う。やっぱり、ジョン・ウーの映画は男と男がガチンコにぶつかって、火花が散らないと物足りなく思えてしまう。Part2はいきなり決戦のようだから、また違うのかもしれないけど。僕は関羽が好きなので活躍に期待。

そういえば、今日まですっかり忘れていたのだが、父の遺品の中にNHK人形劇の「三国志」全巻があって、僕が貰った。川本喜八郎さんの人形造形がいまだに人気がある。ちょっと見てみようか、という気がする今日この頃。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:28:58

2008/12/12 金曜日

劇団大樹公演「ひめごと」

今日は午後から劇団大樹の公演「ひめごと」に行ってきた。劇団大樹は『船、山にのぼる』でナレーションをお願いした、川野誠一さんが主宰している劇団。僕は別の場所で川野さんとお会いすることがあって、ナレーションをお願いした。

本題に入る前に、僕はあまり演劇を見ていない。学生時代は、ぶっ壊れた演劇をちょこちょこ見ていた。その後は、ほんとにぽつぽつだ。だからあんまり演劇には詳しくない。

今日行った劇場は、小さな劇場だけど、舞台にどんと柿木があったり、落ち葉が敷き詰められていたり、25弦の琴が生演奏で付いていたり、とても贅沢な空間が出来上がっていた。芝居は基本的にちょっとレトロな感じもする、畳の部屋で進む。見始めてしばらくして、柱の立て方や廊下の使い方などが、能舞台っぽいなあ、と思っていたら、パンフレットに川野さんがそう書かれていました。(僕は映画でも何でも、見る前にパンフレットなどは基本的に読まないようにしているので。)ストーリーはざっくり書くと、母と娘の、そして娘の出自に関わる話。もう、こういう話は女優の存在感がものを言うのだろう。やりすぎでもいやらしくなるし、すっと伝わるためには、凛とした佇まいもなければいけない。アンサンブルも重要だろうし。その辺がとてもいい感じで、話にすぐ入り込めました。男優二人、川野さん、納谷六郎さんも、一歩間違えばいやらしくなるところを、ちょっと抑えた芝居で全体を品があるものにしていたように思う。タイトルに「ひめごと」とあるように、徐々に母親の秘密が明らかになってくる。ふっと個人的にいろんなことを考えていた・・。

やっぱり生の演劇には独特の密度がありますね。その点、映画っていうのは劇映画にしろドキュメンタリー映画にしろアニメにしろ、ただの白い布に映った影を見ているだけだから、基本的には変人が好むものですね、多分。

そんなこともふと思ったりしました。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:34:30

2008/12/11 木曜日

今年の年末は・・・

すでに「師走」と呼ばれる月です。年末年始の予定は特に決まっていないのですが、特に決まっていない、ということがなんだかうれしいです。思えば、今年は数年ぶりにゆっくり過ごせる年末・年始になりそうな気がしています。諸般の事情があって、旅行に行くような予定もないので、多分、家でだらだらとしてそうです。

その前に、いくつか解決しておきたいことがあるのは確かです。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:22:51

2008/12/10 水曜日

催促/契約書/『エグザイル』/原稿校正

なんだか色々タイトルに並べてしまいました。

こういうところに書くのもなんですが、もう12月にはいって「年末」という雰囲気になってきました。今年映画を公開したわけですが、いくつかの映画館からまだ上映料が振り込まれていないので、催促の電話やFAX。私のような個人事業主にとってはとても大きなことなので、なんとかしなければ・・・との思いから。

ずっと前に書きましたが、僕の岡山の実家は父が亡くなってから、誰も住んでいない空き家になっています。特に、亡くなって4ヵ月後に、親戚の人が住みたいという希望があったので、家の中を整理して、一切合財処分しました。が、具体的に条件などを話し始めるとその話は頓挫。結局、誰も住まないままの空き家になりました。とりあえず、今年の1月、1周忌が過ぎてからどうしようか考えようと思っていたのですが、上映が忙しくなってしばし放置。夏頃からやっと、僕の親しい方に「住みませんか」という話をしていたところ、「住みたい」という話になり、来年1月から住んでもらえそうです。築30年を過ぎた古い家ですが、まだ住める、と思います。親しい方と言っても、なあなあで決めてしまうと、後々、お互いにとってもよくないと思って、契約書を作りました。以前作っていたものを手直ししたものです。こういう硬い文書は不慣れなもので、あれこれいじくってみたのですが、どうも杓子定規のような気もします。しばし苦戦しました。

最近、あまり映画を見ていなかったので(VIDEO ACT!の上映会はまた違う・・)夕方、久しぶりに映画館に行った。見たのは、『エグザイル/絆』。香港映画。ジョニー・トー監督。見る前の先入観とは違った。僕は勝手にもっとベタベタした映画だと思っていたのだが、極めてドライな映画だった。久しぶりに、恐ろしい映画を見た、という印象だ。もし、映画に身体があるとしたら、最近はやたらと脂肪が付きすぎた映画が多いし、逆に皮膚だけで無内容な映画もある。この映画は、さしずめ、骨だけで出来た映画ではないか、と思ったのだ。何せ、ほとんどアクションのみで話が転がり、べたついた感情などほとんど描かれない。セリフも少ない。しばらく展開についていけなかったのだが、途中から戦慄を覚えた。では特別なことをしているか、というとそうでもなく、実はやっていることはシンプル。(ただしアクションシーンの美しさは特筆ものですが。)この「シンプル」というのが、なかなかやっかいなのだ。こういう表現は自信がないと出来ません。恐るべし。

夜、家に帰って、来年出版予定の感染研裁判に関する本の原稿の校正。座談会で喋ったことの校正なので、舌足らず、説明不足の箇所が多く、直すのに一苦労。少しでもいい内容になれば、と思う。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:25:25

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