『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
映画のタイトルを打ちながら、引きつりそうになってしまう、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を見た。(英語タイトルはなんとかならなかったのでしょうか・・。)時々、感想を簡単に言えない映画に出くわすことがあって、この映画もそんな作品だった。
とにかく、映画に出てくる石油のようにどす黒い映画で、つい、叙事詩的と言いそうになるが、そんな壮大さとはまた違い、ある人物の一代記には違いないが、このニュアンスではヒーロー感が漂い、また違うのである。じゃあ、なんだろうと考えていたのだけど、うまく表現できる言葉がなくて、僕が今日のところ思ったのは、リビング・ゴーストの映画、っていうことだろうか。リビング・デッドがゾンビなら、この主人公は明らかに「生きて」はいるのだけど、確かに暴力的ではあるのだけど、どうも生々しい感じがしないのだ。抽象的に書けば、アメリカ現代史の裏を流れる影とでも言おうか。映像は極めて堂々としていて、始めの方はオールドハリウッドを思わせるような感じ(意図的だと思う)さえ漂うのだけど、いい意味で過剰な音楽からして王道ではないずれた感覚もある。今までのポール・トーマス・アンダーソン監督とは違って、正攻法ではあるのだけど、決して普通ではない。
予告編でクローネンバーグの新作もやっていたけど、どうも今のアメリカ映画には「生きた幽霊」が徘徊しているような気がしてならない。見る側からすれば、それはとても興味深いことだ、と思う。