フィリップ・K・ディック
ご多分にもれず、僕は『ブレードランナー』を見て、原作ってどんなのだろうと思って「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読んだ。そもそも僕は本を読まない人だったので、珍しく読んだ本だった。はっきり覚えていないが、高校生の時、ぽつぽつと、本格的には大学に入ってからだったと思う。大学の入学祝に人から貰った図書券で、当時、サンリオ文庫から出ていたものをほぼ全て一気買いした記憶もある。
SFというと、『スター・ウォーズ』以後の能天気なもの(主に映画による)しかイメージがなかったので、ディックの現実が崩壊していく感覚、虚実の皮膜がはがれる感覚は新鮮だった。あれこれ難しいことは分からなかったが、当時、多く出版されていた研究本もくまなく読んだ。
その後はあまり読み返したりしていないのだけど、時々、ディック原作の映画があると、どんなものか、と思って見てしまう。まあ、大体期待を裏切られることが多いのだけど。そもそもハリウッドがプロットだけいただいて、アクション映画にしてみても、原作はあまり派手ではないから、土台無理がある。アイディアにしてみたって、よく指摘されているように、ディックがずば抜けていたものは少なくて、SFにありきたりなガジェット、アイディアを使って別次元の表現になっているから面白いのであって、映画はなかなかその別次元に到達してくれない。唯一、成功したのが『スキャナーダークリー』ではないか。
なんでくどくどとこんなことを書いたかと言うと、今日、映画の日ということもあって、『NEXT ネクスト』を見たのだけど、まあ、ひどい映画だった。原作がディックということになっているようだけど、全然違うらしい。(らしいというのは、元になった短編を忘れちゃったから。今度読んでみよう。)原作のことをおいておいても、つまらない。だいたい2分先が見える、ってほとんどギャグにしか見えないしなあ。核テロの話ももう見飽きたしなあ。ニコラス・ケイジは好きになれないしなあ。とほほ感満載の映画でした。