「田中一村 新たなる全貌」展
どうもここ数日、気になる絵が頭から離れなかった。先週末から千葉市美術館で田中一村の展覧会が始まった、という記事をどこかで見て、あの不思議な絵のことが気になってしょうがなかった。だから、今日、「田中一村 新たなる全貌」展を見に行った。僕は疎いこともあって、田中一村と言えば有名なので、生前から高名な画家だったのかと思っていたのだけど、生前は個展すら開かず、無名だったと知って余計興味を覚えた。田中一村が知られるようになったのは1980年代というから比較的最近のことだ。展示の説明を読むと、いわゆる中央画壇でも落選が続いた時期もあったそうだ。評価、というのがいかに当てにならないものか。さて、展覧会に「新たなる全貌」とやたら気合いの入った展覧会名にあるように、画家の最初期の作品から晩年の作品まで網羅していて見ごたえあり。8歳の時の絵からしてすでにうまい。僕は奄美時代の絵しか知らず、それも印刷されたものを目にした程度で、とのかくその色彩と大胆な構図に惹かれて、勝手に洋画の人かと思っていた。が、日本画の人だった。数多くの掛け軸の絵や、墨彩の絵が意外だった。それらの絵の中にも時々はっとする色遣いがあったりする。けれども、しばらく方向性を迷っていた時代もあったようだ。そして奄美大島時代の作品。印刷物で見ていた印象とかなり違っていた。印刷物では、日の光を浴びてトロピカルな緑が映えた印象が強かったのだが、実物は基本的には日本画の流れにある作品なので、派手な構図・色彩の中にもどこか静謐なものがあって、質感がかなり異なっていた。加えて、多くの絵が縦長の、掛け軸サイズよりやや横が長い、あまり見かけないサイズということもあって不思議な感触を持っている。やはり実物は見てみないと分からない、と改めて思った。
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