ビデオ戦争
『ザ・コーヴ』を見て暗澹たる気持ちになったことをもう一つ書いておきたい。映画の中で太地町の漁民達が、自己防衛の意味もあって映画の製作者達にビデオカメラを向けるシーンが何度も出てくる。ここではカメラ対カメラの衝突が生まれている。そういうシーンを見ながら、僕は上映抗議活動をしているグループの人たちがこの間の抗議行動をビデオで記録しネット上で流している映像のことが頭に浮かんだ。彼らの映像の中には、映画館の支配人宅に押しかけ、父母に抗議する映像もあった。彼らが『ザ・コーヴ』の盗撮を問題視し、太地町の漁民の方々の肖像権侵害を主張しながら、自らも同じ行為をしているのように思える。先日のイメージフォーラム前での抗議行動の映像にはほんの少しだけ僕も映っていた。そんなことを考えていたら、少し脱線したことに思い当った。僕らが普通に生活していて、今や日常的に監視カメラに囲まれて日常的に盗撮されている。少なくとも僕は撮影を認めた覚えはない。いつ、どこで、誰に盗撮されているのか、それすら全く分からない。ここ数年で治安対策の名目で監視カメラの数は飛躍的に増えたから、盗撮される場面も増えたことだろう。そうした映像はどうなっているのだろう。考えてみればこれはかなり怖いことだ。現代はビデオ戦争の時代なのかもしれない。
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コーブ騒動、過熱してますね。僕の大雑把な考えですけど、商業目的のドキュメンタリーや報道などが全て真実を伝えているということさえ悩ましい問題。欧米のドキュメンタリーの傾向として(一世風靡したマイケルムーアとか)一般的に誇張したドラマチックな作品が多い気がします。面白ければなんでもあり?という風潮も自戒をこめて、地元で上映するので楽しみです。
コメント by YAMA — 2010/7/6 火曜日 @ 21:01:28
>YAMAさま
僕もつい、「欧米のドキュメンタリー」の傾向を思ってしまうのですが、全くアプローチが違う欧米のドキュメンタリーも数多くあります。(例えば先日ブログに書いた『モダン・ライフ』はフランスのドキュメンタリーです。)逆にとても「素朴な」ドキュメンタリー映画として受け止められている韓国のドキュメンタリー映画『牛の鈴音』は、僕の見方では演出過剰な映画でした。ドキュメンタリー映画における「演出」の問題はなかなかに難しいものだと思います。
コメント by 本田孝義 — 2010/7/6 火曜日 @ 21:22:47