「南海ホークスがあったころ」
最近自分では全くスポーツをやっていないのに、(やっていないから?)時々、スポーツ・ノンフィクションを読みたくなって読むことがある。スポーツ・ノンフィクションと言えば、大体、有名選手の栄光と挫折みたいな話が多いが、昨日読み終わった「南海ホークスがあったころ―野球ファンとパ・リーグの文化史」はいささか毛色の変わった本だった。文化史とあるように、まずは戦前の関西での野球場建設の歴史が紐解かれる。阪神や阪急が郊外建設と並行して野球場を作ったのは郊外史でも必ず触れられるエピソード。だが大阪球場は大阪の中心地にあったのでいささか事情が異なる。初めて知ったのは、大阪球場は球場内に文化施設を併設することが構想されていたそうだ。そして大阪球場をホームグランドにした南海の歴史。執筆者は当然、南海ファンでもあるのだけど、そこは学者らしく文献を丁寧に掘り起こして、ただ「好きだ」という思いを吐露するだけではなく、立体的に描き出す。また、面白いのはファンの変遷も丁寧に追いかけているところ。言ってみれば、スタジアムと観客の関係から見た都市論にもなっているわけだ。面白かった。ちなみに、僕が子供のころ野球をやっていた頃は、本書で言えば南海ホークスが最も弱かった頃で、ほとんど意識したことはない。また、僕はあまり特定の好きな球団はなかったのだけど、西武ライオンズが出来てすぐから好きで黄金時代にファンだった。その後、工藤、秋山が退団してファンをやめ、以後、特に好きな球団はない。
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