『母なる証明』
見たいと思っていた『母なる証明』をやっと見た。いやはやすごい映画だった。監督のポン・ジュノは『殺人の追憶』を見て、すごい監督だな、と思って『グエムル』を見てまた驚いた。考えてみれば数少ない好きな監督の一人、かもしれない。この『母なる証明』は、広い野原を女性が歩いて来るファーストカットから目が話せなかった。秋なのかくすんだ草、カメラ移動の的確さ、そして驚きの女優の演技、久しぶりに映画を見てゾクゾクした。そして唐突に話は飛ぶが、ラストカットも心をかきむしられる様なカットだった。映画は、殺人事件で逮捕された息子の無実を信じる母親の話。映画を見終わってしばらくして、よくよく考えてみれば、あらすじだけなら、それほど特筆すべきものではないような気がする。だけれども、やっぱり画面から目が離せないのは、語り口や俳優たちの演技など「映画」という感触があるからだろう。相変らす、脱臼したようなギャグも健在だし、即物的な死体も不気味。途中、少し疲れた部分もあったのだが、やはりこの監督は面白いなあ、と思った。
トラックバック URL :