『頭脳警察』
今日は一日かけて、ドキュメンタリー映画『頭脳警察』を見に行った。一日、というのは映画は3部からなっていて、全3部を見ると合計5時間を超えるのだ。『沈まぬ太陽』が3時間半で話題になっているけど、それよりはるかに長い!が、その5時間はまったく長くなく、あっという間だった。見る前はしんどいか、と思っていたけどそんなことはない。さて、映画の話の前に、僕は頭脳警察のコアなファンではない。けれど、幸運なことに学生時代、2度、ライブを見ている。ちょうど、今回の再結成の前の前の再結成、1990年の再結成の時だ。パンフレットにも記載があるが、1度目は法政大学(僕の出身校)の自主法政祭のオールナイトロック。たくさんのバンドが出演する、オールナイトのライブだけど、その中でもとにかくかっこよかった頭脳警察を強烈に覚えている。次は同じ時期の、同じく法政大学学生会館大ホールで行われた江戸アケミ(じゃがたら)一周忌公演。確かラストが頭脳警察だった。僕の記憶に間違いがなければ、演奏のバックに僕がスライドの映写をしたはずだ。(蛇足だが、このライブで遠藤賢司+Toshiで聞いた「輪島の瞳」も忘れ難い。)・・・というような昔の思い出がある。さて、映画である。傑作だった。監督は瀬々敬久。瀬々さんが監督だというのもあって、見たかったのだ。最近はアーティストのドキュメンタリー映画も多いけど、満足出来ることはそれほど多くない。この映画がいいなぁと思ったのは、とかく頭脳警察というと「伝説のバンド」と言われてしまいがちだけど、そうした伝説に焦点を合わせるのではなく、現在進行形でかっこいいバンドであることを描いている点だ。また、音楽ドキュメンタリーを見て難しいなあ、と思うのは、意外とライブシーンの見せ方だったりする。それは単に撮り方ということではなく、どのぐらい曲を聞かせるか、ということ。ライブばっかりなら、ライブDVDでも見ればいいわけだし、ドキュメンタリーだからと言ってバックステージばかり見せられても曲が聞きたくなってくる。この辺のさじ加減は難しい。『頭脳警察』ではその辺の見せ方が抜群でしっかり曲が聞けるシーンがあるかと思えば、思わぬところでバサッと切って次のシーンにいったりする。また、全3部の構成も素晴らしく、1部の冒頭で再結成のライブを少し見せて興味を引きながら、最終的には3部のラストでたっぷりそのライブを見せてくれる。(ラストシーンは京大西部講堂。)時制をところどころ入れ替えつつ、映画としての大きなうねりを作り出してく。再結成と一言でいっても、一足飛びにそこに行くわけではなく、PNATAのバンド・陽炎、響の活動があり、Toshiの活動があり、PANTAの母への思い(1部で葬儀のシーンもある)、重信房子への思い(往復書簡から曲を作る)などがいくつもからまっていきながら、頭脳警察が姿を現してくるのが感動的なのだ。映画としては一応、1部・2部・3部単独でも成立するようになってはいるが、できることなら3部一気に見ることをお勧めする。(東京では一気に見るのは今週だけなのだけど。)
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