『沈黙を破る』
映画を見てクタクタになることがある。一つは映画がつまらなくて耐え切れない場合。もう一つは目が画面に釘付けになって全く息が抜けない場合。今日見たドキュメンタリー映画『沈黙を破る』(監督:土井敏邦)は明らかに後者で、ずっと頭がしびれるような、そんな映画だった。いわゆるパレスチナを日本人が撮ったドキュメンタリー映画は、近年でも何本かある。監督が違えば自ずとアプローチも違うので一まとめには出来ない。この映画を見始めた時は、少々、ぶっきらぼうに始まるので、パレスチナの難民キャンプの光景に慣れるのにしばらく時間がかかった。しかし、難民キャンプがイスラエル軍に包囲され、銃声がけたたましく鳴ると体が硬直するような緊張感を感じる。また、虐殺が行なわれたジェニンのすざまじい光景に心身ともに凍りつくような感覚を覚える。そしてこの映画が興味深いのは、元イスラエル軍兵士達が自らの加害性を赤裸々に見つめた写真展(映画のタイトルはこの写真展のタイトルでもある)を開き、ビデオカメラの前でいかに「兵士」になるかを語っていることだ。巧みな構成のおかげもあって、「被害」と「加害」の関係が頭の中で回転し始める、思考する。パレスチナとイスラエルの関係を考えながら、「暴力」の普遍的な問題まで思考は回る。いい意味でどっと疲れる130分だった。
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