『バオバブの記憶』/『荒木栄の歌が聞こえる』
今日は『バオバブの記憶』というドキュメンタリー映画を見た。本橋成一監督。こういう映画の感想は書きにくい。いい映画だと思います。けど、僕には合わなかった、という書き方が一番近いでしょうか。近年、フィルムで撮られたドキュメンタリー映画はほとんどなく、そういう意味ではフィルムで丁寧に撮られたこの作品は間違いなくいい映画。だけれども、劇映画でもドキュメンタリー映画でも、見ながら、あるいは見終わった時に目を通って心の奥底に何かの像を結ぶものが見た人にとって面白い映画になるのだろう。僕は今回、そうした像が結ばれることはなかった。
書いていなかったのだが、数日前には『荒木栄の歌が聞こえる』というドキュメンタリー映画を見た。港健二郎監督。僕が初めて「荒木栄」のことを知ったのは、この映画にも映っている、ソウルフラワー・モノノケサミットが歌った「がんばろう」だった。その後、同じ港監督の『労働者作曲家・荒木栄』というビデオを見たのだった。そして今回の映画を見ながら思っていたのは、なぜ、うたごえ運動は継承されなかったのかということと(今でもうたごえがあることは知っているのですが、若者には継承されていない、というイメージがある)、今、運動の中で歌われる歌があるだろうか、ということ。前者は運動の思想史的な変遷からも考える必要があるだろう。後者は、僕は、運動の中で歌われる歌がない・多くない、というのは決して悪いことではない、と思った。僕はどうも「皆で歌いましょう」というのが苦手だ。だから、60年前後のうたごえ運動の映像を見ていても、それほど感慨はない。しかしながら、僕は、荒木栄が作った歌はいいなあ、とあらためて思っていたのだ。映画の中で大工さんが「運動の中から歌が生まれたのだ」ということを言っていて、いい言葉だな、と思った。荒木栄って誰?と思う人にこそ見て欲しい映画だと思った。
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長文の紹介コメント、ありがとうございます。
>荒木栄って誰?と思う人にこそ見て欲しい
そうなんです。
荒木栄っていう人は、凄い多面体なんです。
たしかに、「運動の中から歌が生まれる」媒体役を
果たした人ではあるんですが・・・・
実は、
高石ともやさんが、言った「一人でも唄える歌」も
紡ぎだせる稀有な才能だったと思います。
彼の38歳という短い人生をざっと辿るだけで、
現代に通じるきわめて豊穣な問題意識を突きつけて
くれています。
その根幹は、
「人間、いかに生きるべきか?」
そこから、必然的に、「政治と芸術」の問題への
思索の錘を降ろすこともできます。
私の終生のライフワークとして、その荒木栄の全貌に
迫るべき劇映画を・・・と、準備を本格化したいと
思います。
荒木を語る上で欠かせない三井三池争議の映像化が
不可欠ですから、途方もない製作費が必要です。
想像するだに、目もくらむ思いですが、何としても、
具体化する覚悟です。
コメント by みなけん監督 — 2009/4/3 金曜日 @ 0:26:49
>みなけん監督さま
>私の終生のライフワークとして、その荒木栄の全貌に
迫るべき劇映画を・・・と、準備を本格化したいと
思います
ぜひ、ぜひその企画が実現されますことを祈念いたします。
コメント by 本田孝義 — 2009/4/3 金曜日 @ 21:57:35