「神器 ‐軍艦「橿原」殺人事件」
えらい本を読み終わった。その名も「神器 -軍艦「橿原」殺人事件」。作者は奥泉光。上下巻合わせて800ページ。太平洋戦争末期の時代、架空の軍艦「橿原」が舞台。冒頭、天皇にまつわる怪しい話と(何せ、船の外に天皇がへばりついている、というとんでもない話)殺人事件が起こり、ミステリー小説、探偵小説の趣で始まり、後半になってくるとオカルトからSFからあらゆるジャンルが交錯するような奇怪な小説に。それでもついつい読み進めてしまうのは(まあ、途中で嫌になる人もいるでしょうけど)どこかユーモアがあって、こぎみいいから。けど、描かれているのは戦争の意味、国体の意味、戦後の平和の意味などヘビー級の内容。いくつかの謎は怒涛のカオス状態の中で判然としないわけですが、それでもまあいいか、と思えてしまう。えらい小説だ、という感覚がずしりと残る。
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