ドキュメンタリー映画3本/恵比寿映像祭
今日はまず、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルで、『相馬看花 第一部奪われた土地の記憶』(監督:松林要樹)を見た。福島第一原発の事故により、避難を強いられた南相馬市で撮られたドキュメンタリー。僕は松林監督の粘り腰を評価したい。一度の取材では見えてこない、人間同士の関係が深まる中で、その人の人生が浮かび上がってくる。そのことによってしか、原発事故がもたらしたものは見えてこない。僕はそう思った。次に、『Coming Out Story』(監督:梅沢圭)を見た。トランスジェンダーとして、女性の体になることを望む、土肥なつきさん。この人はとても魅力的だった。一方、映画は監督自身の性を少しだけ語り、同時にスタッフの中に過去の自分の性に向き合うことになる者も表れる。僕は悩み始めたスタッフの描き方が少し中途半端な印象を受けた。
それから、恵比寿に行って、恵比寿映像祭 http://www.yebizo.com/ を見る。今年のテーマは「映像のフィジカル」。訳せば、映像の物質性、とでもいうことになるようだ。僕は正直に言えば、あまりピンとくるテーマではなかった。数多くの展示映像を見て、いい作品も確かにあったのだが、僕の中ではなかなかテーマに焦点が結ばない。その後、ホールで上映された『なみのおと』(監督:濱口竜介、酒井耕)を見た。昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映され、僕の周辺ではとても高い評価が聞こえていたのだった。確かにこの映画はいい作品だった。多くの人が指摘しているように、まず、撮影に工夫があり、単純なインタビューを回避している。基本的には2~3人の人物(2回は監督を含む)の対話によって、つなみの体験が語られる。カメラ目線で対話する二人は画面からこちらが見られている、独特の眼差しになる。同時に、編集が驚くほど巧みだ。(一見すると、ただ話をつないだように見えるが、全く違う。)言わば全編を通じて、アクション―リアクションの実験を延々やっていると言ってもいい。監督の言葉を借りれば、これが映画の強度になっている。時として、ただのおしゃべりにしか見えないことの中にこそ、重要なことがあり、そういう体験こそ他者に開かれることで、僕らにも共有出来る何かを感じることが出来る。続編も製作中だそうだ。
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