2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

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2012/2/9 木曜日

『311』

今日は夜、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルで、話題の『311』を見た。昨年、山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された時は、『よみがえりのレシピ』と上映が重なり、僕は後者を見たのだった。『311』上映後、賛否の声が渦巻いていた、との声が聞こえてきていた。本作はドキュメンタリーでいずれも実績のある、安岡卓治・綿井健陽・松林要樹・森達也の4名が東日本大震災の2週間後、被災地に入って撮ったドキュメンタリー。4人が撮影し、4人の共同監督ということになっており、編集は安岡卓治氏。まず、4人は福島第一原発周辺に向かう。ガイガーカウンターが高い放射線量を示しピーピー鳴っている様はリアルであるが、字幕にもある通り、何を撮りたいのかてんで定まらず、結局、引き返してしまう。僕はここで嫌な予感がしていた。その後、岩手県、宮城県と津波の甚大な被害にあった地域に入り、撮影を続けるのだが、僕の中では失望感が湧いてきた。映画を見終わった時の感想は、結局、彼らは「人」に出会えなかったのだ、と思ったのだ。もちろん、震災の2週間後、限られた撮影日数、という条件はあっただろう。だけれども、百戦錬磨の彼らなら、もっと人に出会えたはずだ、と思うのだ。もちろん、本作にも何人かインタビューに答えている方はいるし、特に医師、子どもを亡くした母親の話はには胸を突かれる。だが、どこかこのインタビューすら投げやりな感じがするのだ。こうしたことが残念だ。加えて、上映後、編集した安岡さんは撮影する者の加害性、煩悶が浮かび上がった、と語っていたが、僕にはあまり感じられなかった。だから、僕には話題にもなっているシーン、遺体を写している人(安岡さんだそうだ)に棒きれが投げられるシーンもそれほど印象が残るシーンとも思えなかった。3月3日から公開されるが、どんな反応が起きるのだろうか。

未分類 — text by 本田孝義 @ 0:08:15

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