2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

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2011/7/29 金曜日

『ピュ~ぴる』/『遥かなるふるさと 旅順・大連』

昨日、『ピュ~ぴる』(松永大司監督)というドキュメンタリー映画を見た。ピュ~ぴる、というのはアーティストの名前。僕はこの映画を見ることをちょっと敬遠していた。なぜかと言うと、僕はピュ~ぴるの表現がちょっと苦手だったから。じゃあ、なぜ苦手だったかと言うと、これはなかなか説明が難しいのだが、一番分かりやすく言うと、生理的な部分で苦手であり、その生理的な部分は、多分、ピュ~ぴるの表現にある、肉体性を感じる部分かもしれない。でも、映画は見なければという気持ちがありつつ、終映2日前にやっと見たのだった。結論から言えば、見てよかった、と思う。つい、分かりやすいので「性同一性障害」と言ってしまうのだけど、僕はこの映画を見て、「障害」じゃないなぁ、と思った。このドキュメンタリー映画は約8年間撮っているのだけど、2001年頃のピュ~ぴるは、女の子っぽいけどまだまだ「男」という雰囲気があるのだけど、時間が経つ中でどんどん女性らしくなっていく。同時に表現も研ぎ澄まされていく。そして、本作のクライマックスになっているのが、2005年の横浜トリエンナーレでのパフォーマンスだ。僕はそのパフォーマンスを生で見ていた一人だ。ピュ~ぴるのパフォーマンスがあるから見に行ったわけではなく、たまたま見に行った日にパフォーマンスがあったのだった。正直に書けば、僕はそのパフォーマンスがよく分からなかった。少し高い所でやっていたので、ちょっと見づらかったせいもあったかもしれない。が、「愛の生まれ変わり」というこのパフォーマンスを本作でもう一度見て、全く違う感動を覚えた。特に、去勢手術、失恋後に行われたことを知ったことが大きかった。ただ、少し残念だったのは、そのあとに続く両親のインタビューは不要だと思った。(もう少し言えば、バックステージもいらかなかったかもしれない。)パフォーマンスの余韻をもう少し感じていたかった。多分、僕はこれからもピュ~ぴるの表現が苦手かもしれない。でも、もっと素直に向き合えるような気もしている。

今日は、『遥かなるふるさと 旅順・大連』(監督:羽田澄子)を見た。最終日。あまり年齢のことを言っても意味はないけれど、それでもやはり85歳でバリバリの現役監督というのは素晴らしいと思う。今日は最終日ということで、羽田さんも会場に来られていた。実は本作もちょっと敬遠していて見るのが最終日になってしまった。映画は一言で言うと、羽田さんが若き日を過ごした旅順・大連を再訪する旅映画。(大部分は旅順の話。)旅順の複雑な歴史が語られつつ、落ち着いた丁寧な語り口でありつつ、どこか軽身を感じさせる。僕が本作を見ながら興味津津だったのは、20世紀初頭に建てられたと思しきロシア建築の数々。映画の中で語られるように、旅順の20世紀は複雑。中国の地でありながら、ロシアの租借地となり、その後日露戦争の勝利により、日本が占領する。(第二次世界大戦末まで。その後、再びソ連、中国領になる。)だから、羽田さんもこの地で過ごすことが出来たわけだ。こうした複雑な歴史がある中で、ロシア式建築の数々が残っていることが、映画を見ながら時空間が歪んでくるような不思議な感覚を覚えた。(この感覚は『インセプション』なんて目じゃありません。)同時に、中国が現在急発展していることもあり、新しい現代建築が続々建っており、1世紀の間の建築の変遷を一つの光景の中に見ることが出来るのは興味深い。また、この発展具合を見ていると、こうしたロシア式建築が壊されるのも時間の問題のような気もする。(現在の日本がそうであるように。はからずも、近年まで中国が発達しなかったからこそ、残った建築という皮肉もある。)いずれにせよ、僕は門外漢だけど、植民地建築、建築史に興味がある人にも見てほしいなあ、と思った。

未分類 — text by 本田孝義 @ 23:08:48

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