2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

« 工事妄想/会議 »

2010/12/14 火曜日

「コロンバイン銃乱射事件の真実」

先週末から読みだした長大なノンフィクション「コロンバイン銃乱射事件の真実」を読み終わった。これまた500ページを超えている。けれども一気読み。アメリカのコロンバイン高校で起きた銃乱射事件は1999年のこと。もう10年が経つ。本書を読むと、詳細な事件の全貌を書くには10年が必要だったことも分かる。なぜなら、あまりにもセンセーショナルな事件だったため、当初の報道にかなり誤りがあったからだ。当然、ここ日本ではアメリカ経由の情報がほとんどだったので、僕も違ったイメージを持っていた。その中でも一番違っていたのが、「トレンチコート・マフィア」というイメージだろう。本書を読むと犯人の2人が犯行時トレンチコートを着ていた(それも途中で脱いでいる)のは単に銃を隠すためだったようで、トレンチコート・マフィアと呼ばれるような一団には彼らは加わっていなかったようだ。また、背景に「いじめ」があったという報道も多かったようだが、実際はそんなことはなかったらしい。こうした事件では、日本も同じだが、すぐ犯人の「動機」が詮索される。事件直後の短い時間では、少ない情報から判断が語られる。でも、そう簡単に分かるものではない。コロンバイン高校の事件では、犯人2人が自殺しているため、事件後本人から語られることはなかった。(そのことが殺された人の遺族、けがをした被害者、地域の人びとにどのような憎悪が渦巻いたかも克明に書かれれている。)だが、2人は日記をかなり書いていたり、犯行を決意してからはビデオもいっぱい撮っていた。それらから、捜査官、そして著者は主犯と言われるエリックをサイコパスだった、と結論付けている。(どちらかと言えば従属的な共犯だったディランは自殺願望が強かったようだ。)僕にはその結論の妥当性はよく分からない。けれども、事件発生の日から克明かつ冷静な描写で事件前・当日・事件後の10年を書いた本書は傑出したノンフィクションだと思う。

未分類 — text by 本田孝義 @ 22:09:35

コメント (0) »

この記事にはまだコメントがついていません。

コメント RSS トラックバック URL

コメントをどうぞ