2008年春、渋谷ユーロスペースにてレイトショーされる
映画『船、山にのぼる」の監督・本田孝義のブログです。

本田孝義

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2010/12/5 日曜日

「A3」

森達也著「A3」を読み終わった。森さんと言えば、ドキュメンタリー映画「A」「A2」の監督であるが、近年は作家としての活動が主流だ。随分前のことになるけど、撮影していた映像を編集して「A3」を作る、と聞いたことがあったが、同じタイトル(内容は全然違うもののようだ)をつけた「A3」は本という形で私たちの前に現れた。500ページを超える大著。月刊プレイボーイの連載をまとめたもの。本書の冒頭は、森さんが麻原の1審死刑判決を傍聴するところから始まる。その時に見た麻原の姿の異様さ(とても裁判を受けられる心身状態とは思えない)から、裁判の問題点を記述していく。同時に、麻原やオウムの足跡を丹念に辿り、教団幹部に面会し、なぜ、地下鉄サリン事件が起きたのかを探っていく。そうやって探りながらも、麻原が裁判中にまともに語ることがなかった(できなかった?)ため、決定的な解明はのぞむべくもない。同時に語られるのは、あの事件以後の日本社会の変容が何度も語られる。大変な力作だと思う。日本社会の変容、ということでは、僕自身の興味がある分野でいうと、結局、オウム真理教は失敗したのだが、本気でバイオテロを計画していたことだ。そういう点では遠藤誠一の役割に興味がある。2年前、感染症予防法が改正されたのだけど、本来患者の保護も重要な要素であったはずが、巧妙にバイオテロ防止の趣旨が紛れ込み、かなり無理がある法律になってしまった。直接的な契機は、9・11後の炭そ菌事件だけど、背景にはオウムのバイオテロ未遂もあったのではないか、と僕は思っている。なお、森さんの本の最後は中川智正とのやり取りだ。彼は僕の高校の先輩にあたる。6歳上だけど。

未分類 — text by 本田孝義 @ 20:58:48

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