『食卓の肖像』
今日は午後から金子サトシ監督『食卓の肖像』というドキュメンタリー映画を見た。本作は1968年に発生した”カネミ油症事件”を描いた作品。カネミ倉庫株式会社が製造した食用油に含まれていたPCB(実質的にはダイオキシン)を摂取したことによって、皮膚や内臓、神経などに障害が出た。14000人もの人びとが被害を訴えたにも関わらず、2000人弱の人しか患者として認定されなかった。監督の金子さんは、被害者の声にひたすら耳を傾け、彼らがどのような被害を受け、どう生きてきたかを丹念に描き出している。事件がおきた当時を知らない(まさに僕が生まれた年だ)僕のような人間は、事件のあらましを「知識」として知ってはいても、現在もその後遺症が続き、救済すらまともにされていないことをつい忘れてしまうし、「実感」を持てなかったりする。そういう人たちにこそ、この映画は大きな手掛かりを与えてくれると思う。何年にもわたる取材が生み出したものでもある。ただ、僕が少ししんどかったのは、被害者の証言と黒味に白字の字幕による説明が何度も交差し、追いかけるのが少々疲れたことと、映画のリズムがかなりそがれている印象を受けた。映画のリズム、とうっかり書いてしまったが、どう感じるかは人それぞれであり、合う人・合わない人がいるだけである。(場合によっては、見た時の体調でも違う。)もう一つ、こういう題材で難しいのはどこまで説明するか、という部分だろう。特に知らない人に向けては出来るだけ丁寧に説明したいし、丁寧に説明すればするだけ今度は「映画」としての何かが逃げて行ってしまう。僕が構成としていいなと思ったのは、裁判の経過や原因が何か知りたいと思った頃に、ちょうど字幕で説明してくれたことだった。最初に全て知らせるよりはよかった、と思う。
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