『ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡』
ふと突発的に映画が見たくなって、『ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡』という、ドキュメンタリー映画を見に行った。コンゴのストリートミュージシャンのドキュメンタリー、と書くと簡単なんだけど、ストリートと言ってもメンバーは路上生活者であり、身体障害者でもある。彼らが路上で演奏し歌う歌のグルーブが素晴らしい。冒頭の歌なんて「トンカラ~段ボール」というタイトルで、「俺達にはトンカラがある」なんて歌詞はそう簡単には出てこないだろう。映画の製作者達はそんな彼らに惚れ込んで、映画を撮るだけではなく、なんとかヨーロッパでCDデビューさせようと悪戦苦闘。途中、2年ほど間が飛んだりする。スタジオでの録音がどうもうまくいかず、いつも練習している動物園での録音の方がメンバーがのびのびしていて微笑ましい。サトンゲという、ブリキ缶に一本だけの弦を張った楽器を操るロジェくんは、メンバーに加わったばかりの頃は恐る恐る音を出していたのに、終わりの方ではすっかり溶け込んでなくてはならない存在になっている。映画は「僕がバンドを継いでいくんだ」という彼の力強いコメントで締めくくられる。路上生活者でかつ身体障害者、となればつい感動ものになりそうなものの、カメラは意外とフラットでことさら境遇を強調することもなく、きちんとミュージシャンとして撮影しているところがいい。映画の終盤は、CDデビューした彼らのヨーロッパツアー。僕は映画『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』のアメリカツアーのシーンがあまり好きではないのだけど、この映画のヨーロッパツアーにはあまり嫌な感じは受けなかった。蛇足だけど、ベンダ・ビリリの人たちが乗っている、手漕ぎ三輪自転車は自作だそうだが、僕は日本で高齢者・身障者用オーダーメイド自転車を作っている、堀田健一さんが作られている自転車のことを思い出していた。なお、ベンダ・ビリリは9~10月に日本ツアーを行うそうだ。
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