『友川カズキ 花々の過失』
今日は試写で『友川カズキ 花々の過失』というドキュメンタリー映画を見た。歌手・友川カズキのドキュメンタリー映画。ファンの方には申し訳ないが、僕は友川さんのファンでも何でもない。でも、この映画はとてもいい映画だった。ヴィンセント・ムーン監督の映像が独特で、少しセピアかかった荒い画面(多分、編集時の効果もあるはず)が、一瞬、8mmフィルムの粒子を思わせる。その画像が友川さんの声と存在感によく合っている。画面の切り取り方も迫力がある。映画は友川さんが歌うシーンと日常、本人と幾人かのインタビューで構成されているが、僕にはちょうどいいバランスに思えた。音楽、あるいは音楽家のドキュメンタリーで難しいなあ、と思うのは、ファンの人は音楽をたっぷり聞きたいだろうし、ファンではない人にとってはその音楽家がどんな人か知りたかったりする。かと言って、肝心な音楽が十分に聞けなかったりすると消化不良を起こしてしまう。この辺の感じ方は人それぞれだと思うけど、僕は本作ではストレスを感じなかった。そして、もっとも重要なことは、いいドキュメンタリー映画は(劇映画も基本的には同じだけど)目の前に表れている映像を目で追いかけながらも、脳内では何がしかの「像」が立ち上がってくるような作品だと思う。描きかたが丁寧だったり、言わんとすることに共感できたりしても、いっこうに何も立ち上がってこない映画はいっぱいある。そんな中、本作は久しぶりに友川カズキという歌手の存在感が僕の脳内で立ち上がってくるのを感じられた。それはいい映画だ、ということなのだと思う。それにしても、近年、音楽もの、音楽家のドキュメンタリー映画には秀作が多いと思う。
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